退職後、前の会社から連絡が来る…応じる義務はありません。答える線引きと断り方
辞めたあとの会社からの連絡に、基本的に応じる義務はありません。
雇用契約は退職日で終わっています。業務の指示を受ける立場では、もうありません。
ただ、一度だけ短く答えて終わらせるほうが、結果的に早く静かになります。
賠償・訴えるといった言葉が出てきたら、自分で対応せず、公的な窓口に相談してください。
辞めて、数週間。
知らない番号から着信がある。
出てみると、前の職場の上司だった。
「あのファイル、どこにある?」
「引き継ぎのとき聞いたけど、見当たらなくて」
もう自分の仕事ではないのに、断っていいのかが分からない。
この記事は、どこまで応じて、どこから断っていいかを書きます。
まず、立場を確認してください
退職日をもって、雇用契約は終わっています。
会社の指示に従う立場では、もうありません。
つまり、連絡に応じるかどうかは、あなたが決めていいことです。
ここを押さえておかないと、断ること自体が悪いことのように感じてしまいます。
でも、悪いことではありません。
| 在職中 | 退職後 |
|---|---|
| 業務の指示に従う立場 | 指示を受ける立場ではありません |
| 働いた時間に対して給料が出る | 対応しても、対価はありません |
| 引き継ぎは業務の一部 | 引き継ぎの義務は、退職日で終わっています |
3つ目が大事です。
引き継ぎは、在職中にやるべきことでした。
それが終わっていないのは、会社の側の準備不足です。
なぜ、断りにくく感じるのか
立場としては断っていいのに、実際には断りにくい。
理由は、気持ちの側にあります。
| 頭に浮かぶこと | 実際のところ |
|---|---|
| 「お世話になったのに、冷たいだろうか」 | お世話になったことと、無償で働くことは別の話です |
| 「自分の引き継ぎが悪かったのでは」 | 引き継ぎの体制を用意するのは、会社の役割です |
| 「断ったら、悪く言われそう」 | もう同じ場所にいません。評価を気にする相手ではありません |
| 「困っているなら助けたい」 | その気持ちは大切に。ただ、一度だけで区切ってください |
とくに2つ目で悩む人が多いです。
ですが、引き継ぎに使える時間を決めたのも、後任をいつ決めるかを決めたのも、会社です。
あなたは、与えられた時間の中でやれることをやりました。
それで足りなかったなら、足りない設計だったということです。
親切が、当たり前になってしまう
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
一度応じると、次も来ます。
相手に悪気はありません。
聞けば答えてもらえると分かると、いちばん早い方法として使われるだけです。
だからこそ、応じるときに「今後はご遠慮ください」を必ず添える必要があります。
親切にするなら、区切りとセットにしてください。
どんな連絡が来るのか
よくあるのは、この4つです。
| 連絡の種類 | 対応の目安 |
|---|---|
| ①ものの場所を聞かれる (ファイル・資料・鍵がどこにあるか) | 知っていれば、一度だけ短く答える。それで終わることが多いです |
| ②仕事のやり方を聞かれる (手順・取引先とのやり取り) | 一度は答えてもいい。ただ、繰り返されるなら断って構いません |
| ③出社や作業を求められる (探しに来い・手伝いに来い) | 応じる必要はありません。断って大丈夫です |
| ④手続きの連絡 (書類・保険・返却物) | これは応じてください。あなたの不利益になります |
①と④は、応じたほうが早いものです。
②と③は、断っていいものです。
この線引きだけ持っておけば、電話が鳴っても慌てません。
一度だけ、短く答えて終わらせる
①のような軽い質問なら、一度答えてしまうほうが早いです。
断ると、かえって何度も連絡が来ることがあります。
「◯◯のフォルダの中にあったはずです。
すでに退職しておりますので、こちらで確認はできかねます。
今後のご連絡はご遠慮いただけますと幸いです。」
答える+区切るを、1回で済ませるのがコツです。
「今後は」の一文があるかどうかで、次があるかどうかが変わります。
これを言わずに答え続けると、相談相手として使われ続けます。
メールなら、記録が残ります
できれば、電話ではなくメールでやり取りしてください。
電話は、その場で判断を迫られます。
メールなら、落ち着いて書けますし、記録も残ります。
「いま手が離せないので、ご用件をメールでいただけますか。
確認のうえ、お返事します。」
こう言うだけで、その場で答えずに済みます。
そして、多くの場合、メールは来ません。
わざわざ書くほどの用件ではなかった、ということです。
断るときの、伝え方
②や③のように、手間のかかることを頼まれたときの断り方です。
「ご連絡ありがとうございます。
すでに退職しており、現在は別の仕事に就いております。
申し訳ありませんが、対応はいたしかねます。」
ポイントは、理由を長く説明しないことです。
説明すると、そこを突かれて交渉になります。
「できません」ではなく「いたしかねます」にすると、角が立ちにくくなります。
・いまの職場のこと(会社名・業務内容)
・どのくらい忙しいか(忙しさは交渉の余地になります)
・「今度なら大丈夫」といった含み
・辞めたときの不満
最後の項目は、とくに注意してください。
つい言いたくなりますが、話が長くなるだけです。
それでも、しつこいとき
断っても連絡が続くことがあります。
その場合は、段階を踏んでください。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1回目 | 短く答えて、「今後はご遠慮ください」と伝える |
| 2回目 | もう一度、対応できない旨だけ返す。理由は書かない |
| 3回目以降 | 返さなくて構いません。着信の記録だけ残す |
| 続くとき | 番号を着信拒否にする。記録は消さずに残しておく |
3回目からは、返さなくていいと決めておいてください。
返すたびに「連絡すれば返ってくる」と学習されます。
記録を残しておくのは、あとで相談するときのためです。
日時と、どんな内容だったかをメモしておけば十分です。
お金や責任の話が出てきたら
・「損害が出たから弁償しろ」と言われた
・「訴える」と言われた
・退職金や最後の給料を払わないと言われた
このような話になったら、その場で返事をせず、公的な窓口に相談してください。
相談先は、各労働局の総合労働相談コーナーです。
無料で、予約なしでも相談できます。
金額が大きい場合や、実際に請求書が届いた場合は、弁護士への相談も考えてください。
法テラス(日本司法支援センター)では、条件を満たせば無料の法律相談を受けられる制度があります。
大事なのは、その場で認めたり、支払いを約束したりしないことです。
言われた内容を、日時とあわせてメモに残してください。
辞める前に、できること
これから辞める人は、先に手を打っておくと、あとが楽になります。
・手順を書いたものを残す(口頭で伝えただけだと、必ず忘れられます)
・ファイルの置き場所を、一覧にして渡す
・誰に渡したかを記録しておく(「聞いていない」を防げます)
・最終出社日に、残っている課題を書面で共有する
1つ目が、いちばん効きます。
紙やデータで残っていれば、聞かなくても分かる状態になります。
連絡が来るのは、多くの場合「どこにあるか分からない」だからです。
書いたものは、後任だけでなく、上司にも同じものを渡してください。
後任が辞めたり異動したりしても、資料が残ります。
引き継ぎの進め方は、後任がいないまま辞めるときも参考にしてください。
退職後に備えて、業務の資料を個人の端末に保存しておくことは避けてください。会社の情報の持ち出しにあたる可能性があります。残すものは、会社の中に置いていく形にしてください。
タイプ別|いま、どれに当てはまるか
□ ものの場所を聞かれただけ
□ 相手も申し訳なさそうにしている
□ まだ1〜2回しか来ていない
このタイプは、短く答えて、区切る一言で終わります。
□ 何度も連絡が来る
□ 出社や作業を求められている
□ 断っても、また連絡が来る
このタイプは、3回目から返さないと決めてください。
□ お金の話が出てきた
□ 訴えると言われた
□ 家族や、いまの職場にまで連絡が来ている
このタイプは、一人で抱えないでください。窓口に相談してください。
よくある質問
Q. 引き継ぎが不十分だったのは、自分のせいでしょうか
引き継ぎは、在職中に会社が体制を整えて行うものです。時間が足りなかったなら、それは会社の準備の問題です。退職日を過ぎたあとまで、あなたが一人で背負う話ではありません。
Q. 答えないと、損害賠償を求められることはありますか
退職者への損害賠償を会社が求める場合、実際に損害が生じているか、その責任がどこにあるかなど、いくつもの点が問題になります。判断は個別の事情によって変わります。口頭で「賠償しろ」と言われただけで、その場で支払いを約束しないでください。不安なら、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
Q. 円満に辞めたので、無下にできません
その気持ちは自然です。一度だけ答えて、そのときに「今後はご遠慮ください」と添えてください。関係を壊さずに、区切ることはできます。
Q. いまの職場に電話をかけられました
それは行きすぎです。前の会社に、いまの職場へ連絡しないよう明確に伝えてください。それでも続くなら、記録を残して窓口に相談してください。
Q. 退職後の連絡先を教えてと言われています
手続きに必要な範囲(書類の送付先など)は伝えてください。それ以外は、個人の携帯番号や私用のアドレスを教える義務はありません。会社の手続き用の連絡先だけで十分です。
Q. 元同僚から個人的に相談が来ます
会社からの業務連絡とは別の話です。応じたいなら応じて構いませんし、負担なら「もう分からなくなってしまって」と伝えて大丈夫です。
Q. 書類や保険の連絡は、無視してもいいですか
これは応じてください。離職票、源泉徴収票、社会保険の手続きなどは、あなた自身の手続きに必要なものです。無視すると、あなたが困ります。
Q. 返却し忘れたものがあります
早めに郵送で返してください。放置すると、そこを理由に連絡が続きます。送った記録が残る方法で送り、控えを保管しておいてください。
Q. 退職して何か月も経つのに、まだ連絡が来ます
時間が経つほど、応じる理由は薄くなります。一度「退職から時間も経っており、対応いたしかねます」と伝えて、あとは返さなくて構いません。
Q. 断ったら、再就職のときに悪く言われませんか
前職に問い合わせて評価を聞くことは、本人の同意なく行われるものではありません。連絡を断ったことが、次の職場に伝わる仕組みにはなっていません。過度に心配しなくて大丈夫です。
Q. 相手が困っているのが分かるので、放っておけません
一度だけ答えて、区切ってください。放置するのがつらいなら、それがいちばん納得できる形です。ただ、答え続けると相手はあなたに頼り続けます。区切ることは、相手が自分で解決する力を戻すことでもあります。
Q. 電話に出ないと、家まで来ないか不安です
通常は、そこまでのことは起きません。ただ、実際に自宅に来られた、深夜に何度も電話が来るといったことがあれば、記録を残して警察や労働局の窓口に相談してください。我慢する必要はありません。
Q. 業務内容を教えたら、お金をもらえますか
依頼として引き受け、報酬の取り決めをしたうえでなら、その形もありえます。ただ、口約束だと支払われないことがあります。金額と範囲を先に文書で決めないなら、引き受けないほうが安全です。
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新人で残業を断れない
入社前に会社から連絡がない
転職先の残業が聞いていたより多い
もう、あなたの仕事ではありません
① 来ている連絡が、①〜④のどれかを決める
② 答えるなら「今後はご遠慮ください」を必ず添える
③ 日時と内容を、メモに残しておく
退職後の連絡に、基本的に応じる義務はありません。
ものの場所や、自分の手続きに関わることだけ答えれば十分です。
それ以外は、断って構いません。
引き継ぎが足りていないのは、あなたの責任ではなく、会社の準備の問題です。
辞めたあとまで縛られる働き方が続くようなら、転職エージェントの選び方も見ておいてください。
※本記事は一般的な情報の解説であり、法的助言ではありません。個別の事情によって判断は変わります。困ったときは総合労働相談コーナー(各労働局)や法テラス、弁護士などの専門機関にご相談ください。※本記事には広告(PR)を含みます。