引き継ぎなしで仕事を任された…最初にやるのは「覚える」でなく「数える」
引き継ぎがないとき、最初にやることは「覚える」ではありません。
「何があるのかを把握する」です。
全体像が見えないまま目の前の作業だけ処理すると、いつか必ず事故ります。
とくに危ないのは、月に1回・年に1回の作業です。
前任者はもういない。
資料もない。
あるのは、「分からなければ聞いて」という言葉だけ。
何が分からないかも、分かりません。
この記事は、そこから立ち上げる手順を書きます。
まず、これは珍しくありません
引き継ぎゼロは、かなりの頻度で起きています。
| 起きる理由 | 中身 |
|---|---|
| 前任者がすでに辞めている | 採用が間に合わず、空白期間ができていたパターン |
| 急に抜けた | 体調やトラブル。会社側も準備できていません |
| 属人化していた | 前任者本人も説明できる形に整理していなかった |
| 引き継ぎの仕組みがない | 会社にそもそも手順が存在しない |
| 「経験者だから」と省かれた | 業務の経験と、その会社のやり方は別物です |
どれも、あなたの責任ではありません。
ただ、目の前の仕事は回さないといけない。
だから、手順の話をします。
最初の1週間は、覚えないでください
やることは1つです。
「この仕事には、どんな作業があるのか」を洗い出すこと。
やり方を覚えるのは、そのあとです。
① 前任者宛のメール(転送設定や共有アカウントがあれば最優先)
② 共有フォルダのファイル更新日(毎月更新のファイル=月次作業です)
③ 前任者のカレンダー(定例会議・締切のリマインダが残っています)
④ 請求書・伝票の綴り(お金が動くところに作業があります)
⑤ 他部署の人(「前の担当の方に毎月お願いしていた件」が出てきます)
②がいちばん効きます。
共有フォルダを更新日順に並べ替えるだけで、
「毎月同じ時期に触られているファイル」が見えます。
それが、誰も教えてくれなかった月次作業です。
⑤は、やっておくと後で助かります
他部署や取引先に、先に一言入れておいてください。
「◯月から◯◯を担当することになりました△△です。
前任者から引き継ぎきれていない部分があるかもしれません。
いつも依頼されている件がありましたら、一度お知らせいただけますでしょうか」
・先に言っておくと、あとで責められません
・相手から作業が出てきます(自分では気づけないもの)
・正直に言っても、印象は悪くなりません
隠していて後から発覚するより、最初に言っておくほうが圧倒的に楽です。
自分がどの状況か、確かめてください
「引き継ぎがない」にも、3つの型があります。
□ 前任者は退職済み
□ でも、すぐに締切が来る作業はない
□ 聞ける相手(他部署・上司)はいる
いちばん良い状況です。この記事の手順どおり、洗い出しから始めてください。
□ 今月中に締切のある作業がある
□ やり方が分からない
洗い出しより締切のあるものが先です。
「◯日が締切の△△について、今回だけ一緒に見ていただけますか」
と上司に頼んでください。初回に頼むのは、まったく問題ありません。
□ 前任者は2人でやっていた仕事を、1人で任された
□ 引き継ぎ以前に、量が終わらない
□ 残業しないと回らない
これは引き継ぎの問題ではなく、人員配置の問題です。
工夫では埋まりません。早めに上司に数字で出してください。
③の場合は、「終わらない」でなく「時間」で伝えてください。
「いま把握できている作業を合計すると、月◯時間かかる見込みです。所定内では△時間不足します。優先順位をご相談させてください」
・「できません」でなく「時間が足りません」にする
・数字で出す(感覚だと押し返されます)
・捨てるものを決めてもらう(自分で判断しない)
いちばん危ないのは、月次と年次です
毎日の作業は、やらなければすぐ気づきます。
危ないのは、頻度が低い作業です。
| 頻度 | 危なさ |
|---|---|
| 毎日 | 抜けてもすぐ分かります。危険度は低い |
| 毎週 | 1回飛ばすと誰かが気づきます |
| 毎月 | 要注意。存在自体を知らないまま、締切を過ぎます |
| 年1回 | いちばん危険。1年後に「なぜやっていないのか」と言われます |
年1回の作業は、引き継ぎがなければ存在すら分かりません。
だから、去年のこの時期に何が動いたかを見てください。
・共有フォルダを「1年前の同じ月」で絞って見る
・前任者のカレンダーを1年分さかのぼる
・「毎年この時期にやることはありますか」と上司に聞く
1年分ざっと見るだけで、地雷はかなり減ります。
前任者が残したものは、意外と読めます
「資料がない」と言われても、まったくのゼロということはあまりありません。
整理されていないだけで、断片は残っています。
| 残っているもの | ここから分かること |
|---|---|
| 送信済みメール | 宝の山。「いつも通り」と書かれた依頼文から、毎月の流れが読めます |
| 去年の同じ月のファイル | 去年の自分と同じ立場の人が作ったもの。そのまま雛形になります |
| ファイル名の付け方 | 「◯◯_202603_最終」のような規則から、提出の周期が見えます |
| 会議の議事録 | 誰が何を決める立場かが分かります。相談先の地図になります |
| 付箋・手書きメモ | デスクに残っていることがあります。捨てる前に一度読んでください |
1つ目がいちばん使えます。
送信済みメールを「いつも」「例年」「毎月」で検索してみてください。
定例のやり取りが、まとめて出てきます。
・「いつもお世話に」+相手の会社名(定期の取引先が出ます)
・「例年」「毎年」「昨年同様」(年次作業が出ます)
・「締切」「期日」「までに」(期限のある作業が出ます)
・「申請」「承認」「提出」(手続き系が出ます)
1時間かければ、作業が10〜20個は見つかります。
アクセス権がない場合は、上司に相談してください。
「業務把握のために、前任者のメールを確認させていただけますか」
これは、断られる理由が少ない依頼です。
分からないまま進めないでください
・推測で処理する(あとで全部やり直しになります)
・「聞ける人がいないから」と一人で抱える
・前任者に個人的に連絡を取り続ける(相手にも生活があります)
・できていないことを報告しない(発覚が遅いほど大ごとになります)
4つ目がいちばん大事です。
引き継ぎがない状態は、会社側も分かっているはずです。
だから、早い段階で状況を出しておいてください。
上司への伝え方
| 言わないほうがいい | こう言う |
|---|---|
| 引き継ぎがなくて困っています | 「把握できた業務を一覧にしました。抜けがないかご確認いただけますか」 |
| 誰も教えてくれません | 「この件は誰に確認するのが適切でしょうか」 |
| できません | 「◯月の△△は、今回は一緒に見ていただけますか」 |
一覧を持っていくのが効きます。
困っている報告より、把握した結果を出したほうが早いです。
しかも、抜けを埋めてもらえます。
一覧は、そのまま引き継ぎ資料になります
洗い出した作業の一覧は、捨てないでください。
それが、この職場に存在しなかったものだからです。
形式は簡単で構いません。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 作業名 | 自分が分かる呼び方で十分です |
| 頻度 | 毎日/毎週/毎月/年1回。これがいちばん大事 |
| 締切 | 「毎月5日まで」など。分からなければ空欄でOK |
| 関係する人 | 誰に確認するか。次に困ったときの入口になります |
| 手順の置き場所 | ファイルのパスやメモの場所。中身は書かなくていい |
全部埋める必要はありません。
頻度だけ埋まっていれば、地雷は踏みません。
そしてこの一覧は、3つの意味であなたを助けます。
① 抜けを上司に埋めてもらえる(口頭の相談より話が早い)
② 「把握しています」の証拠になる(何かあったときに守ってくれます)
③ 職務経歴書にそのまま使える(担当業務の説明が一発で書けます)
③は数年後に効いてきます。
自分が何をやっていたかは、時間が経つと思い出せません。
よくある質問
Q. 引き継ぎがないまま起きたミスは、誰の責任ですか
実務としては、報告したかどうかで扱いが変わります。把握できていない範囲を先に一覧で共有しておけば、組織の問題として扱われやすくなります。黙って抱えていると、個人の問題にされがちです。だから、早い段階で「見えていない範囲」を文字にしてください。
Q. 前任者に連絡してもいいですか
一度なら問題ありません。ただし、会社を通すほうが安全です(個人的な依頼は相手の負担になります)。聞くなら質問をまとめて一度に。何度も連絡すると、相手も答えなくなります。
Q. 何が分からないかも分かりません
その状態が普通です。だから「分からないことを探す」でなく「作業を数える」から始めてください。共有フォルダとカレンダーを見るだけで、知らない作業が10個は出てきます。
Q. 教える人はいるのに、教えてもらえません
それは引き継ぎの問題ではなく、人の問題です。対処が違うので中途入社で教えてもらえないを見てください。
Q. 覚えることが多すぎてパンクしそうです
量の問題なら転職して覚えることが多すぎるにまとめました。引き継ぎゼロの場合は、覚える前に数えるのが先です。
Q. 一覧を作る時間がありません
完成させようとするから時間が要ります。気づいたときに1行足すだけで構いません。2週間も続ければ、かなりの形になります。最初から表を作ろうとせず、メモ帳に箇条書きから始めてください。
Q. 引き継ぎがなかったことを、面接で話してもいいですか
話し方次第です。愚痴として話すと不利になりますが、「属人化した業務を可視化した経験」として話せば強い実績になります。同じ出来事でも、受け身で語るか、やったこととして語るかで受け取られ方が変わります。
Q. 会社に改善を求めてもいいですか
求めて構いませんが、順番があります。まず自分が一覧を作り、それを見せながら「次の人のために仕組みにしませんか」と出すほうが通ります。何もない状態で制度を求めても、動きにくいのが実際です。
この状況は、実はチャンスでもあります
つらい話ばかり書いてきましたが、1つだけ良い面があります。
引き継ぎがあった人は、渡された範囲しか知りません。
でも、自分で洗い出した人は、業務の全体像を持つことになります。
・「その件なら分かります」と言える範囲が、周りより広い
・誰も持っていない一覧を、自分だけ持っている
・次に人が入るとき、教える側になれる
渡されなかったからこそ、自分で作ることになった。
これは、あとから効いてきます。
いまは、そんな余裕はないと思います。
ただ、いま作っている一覧は捨てないでください。
把握できた時点で、8割は終わっています
① 共有フォルダを更新日順に並べ替えて、上から30個見る
② 「毎月同じ時期に更新されているファイル」に印をつける
③ 把握できた作業を、箇条書きで一覧にし始める(完成しなくて構いません)
引き継ぎがないと、自分の能力不足に思えてきます。
でも、渡されていない情報は、誰にも扱えません。
できていないのではなく、渡されていないだけです。
そして、この状況を一度くぐった人は強くなります。
引き継ぎ資料を自分で作ることになるので、業務の全体像が誰よりも見えるようになるからです。
その一覧は、そのまま自分の実績になります。
前任者と比べられてつらい場合は転職先で前任者と比べられるも見ておいてください。
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※本記事は一般的な情報の解説であり、法的助言ではありません。過大な業務量やハラスメントを受けた場合は、総合労働相談コーナー(各労働局)などの公的な窓口にご相談ください。※本記事には広告(PR)を含みます。