転職先で前任者と比べられる…劣っているのでなく、物差しがないだけです
前任者と比べられるのは、あなたが劣っているからではありません。
周りがまだ「あなたの物差し」を持っていないから、前任者を物差しにしているだけです。
だから、反論しても消えません。物差しができれば、勝手に消えます。
目安は3か月です。
「前任者はこうしてたけど」
「◯◯さんはもっと早かった」
聞くたびに、じわじわ削られます。
言い返せば角が立つ。
黙っていれば認めたことになる気がする。
しかも、その前任者に会ったこともない。
この記事は、その状況の抜け方を書きます。
なぜ、比べられるのか
先に言っておくと、悪意はほとんどありません。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 周りが前任者のやり方に慣れている | やり方が変わると自分たちの手間が増えます。あなたへの評価ではなく、自分たちの都合です |
| あなたの物差しがまだない | 何をどこまでできる人か分からない。比較は、情報がないときの代用品です |
| 引き継ぎ資料がない | 基準が言葉になっていないので、前任者を例に出すしか説明のしようがない |
| 前任者が辞めた理由を知らない | 周りの中では「良い人が辞めた」で止まっています |
| 単純な悪意 | これもゼロではありません。ただしいちばん少ないです |
上の4つは、時間と情報で消えます。
だから、やるべきことは反論ではありません。
言われている言葉を、翻訳してみてください
同じ言葉でも、裏にあるものが違います。
| 言われた言葉 | だいたいの本音 |
|---|---|
| 「前任者はこうしてた」 | 私はそのやり方に慣れている(変えられると困る) |
| 「◯◯さんは早かった」 | いつ終わるか読めなくて困っている |
| 「◯◯さんなら分かってた」 | 説明するのが面倒(自分の手間の話) |
| 「前の人は聞かなくてもできた」 | 質問に答える余裕がない |
| 「◯◯さん、辞めなければね」 | 単なる感傷。あなたの話ですらありません |
こうして並べると、ほとんどが相手側の事情だと分かります。
あなたの能力を評価した言葉は、1つもありません。
いちばん効くのは、こちらから聞くことです
意外に思うかもしれません。
でも、比較をやめさせる最短の手はこれです。
「前任者の方は、これをどうやっていましたか。同じやり方に合わせたいので教えてください」
この一言で、比較が「攻撃」から「相談」に変わります。
理由は3つあります。
① 相手は責める理由を失う(すでに合わせようとしている人を責められません)
② 本当のやり方が手に入る(比較の中身が具体的に分かります)
③ 「前任者を尊重している人」になる(周りの警戒が下がります)
比較されるのを嫌がる人ほど、前任者の話題を避けます。
でも避けるほど、周りは比べたくなります。
自分から前任者の話に乗ると、その話題は急速に終わります。
自分がどちらのタイプか、確かめてください
同じ「比べられる」でも、中身が2つに分かれます。
□ 入って3か月以内
□ 比較してくるのは、前任者と一緒に働いていた人
□ 言われるのは、やり方や速さについて
□ 質問には答えてもらえる
□ 他の場面では普通に接してもらえる
この場合は、時間で消えます。この記事の手順で十分です。
□ 3か月を過ぎても頻度が変わらない
□ 前任者を知らない人まで言ってくる
□ 人格に及ぶ(「だから前の人が良かった」など)
□ 人前で言われる
□ 質問しても答えてもらえない
これは比較ではなく、あなたを受け入れない口実として前任者が使われています。
あなたが頑張っても変わりません。
②なら、3か月を待つ必要はありません。
記録を残しつつ、次の選択肢を並行して持ってください。
エージェントの選び方は転職エージェントおすすめ3選にまとめました。いま動くためでなく、選択肢があると分かるためです。
やってはいけないこと
・前任者を否定する(「そのやり方は非効率では」は最悪手です)
・最初の3か月でやり方を変える
・その場で反論する(比較が感情の対立に変わります)
・前任者について周りに聞いて回る(気にしていることが伝わります)
・前の職場のやり方を出す(比較の応酬になります)
とくに1つ目です。
前任者を否定すると、前任者を評価していた人ごと否定したことになります。
その人たちは、いまあなたの周りにいます。
やり方を変えるのは、3か月後です
改善案があっても、最初は飲み込んでください。
同じことを言っても、入ったばかりの人と、3か月やった人とでは通り方が違います。
3か月やってから出す提案は、「分かったうえでの提案」になります。
それまでは、寝かせておいてください。
3か月で「物差し」を作る、具体的なやり方
「物差しができれば比較は終わる」と書きました。
では、物差しはどう作るのか。
答えは1つで、数字か、成果物を残すことです。
・件数・処理数(「今週は◯件やりました」と言える形にする)
・手順書・マニュアル(残ると、あなたの仕事として見えます)
・期限を守った記録(地味ですが、いちばん効きます)
・誰かの手間を1つ減らした(相手が覚えていてくれます)
3つ目がいちばん過小評価されています。
言われた期限を毎回守るだけで、「この人は読める」という評価に変わります。
前任者がどんなに速くても、読めるかどうかは別の軸です。
報告の仕方を、少し変えるだけでも効きます
×「終わりました」
◯「◯件、△時までに終わりました。次は□に入ります」
・数字を入れる(比較でなく事実で語れます)
・時間を入れる(速さの基準を自分で提示できます)
・次を言う(進捗が読める人になります)
相手が「前任者はどうだったか」を思い出す前に、判断材料を渡してしまうのがコツです。
比較が起きるのは、判断材料がない一瞬です。
その一瞬を、自分の数字で埋めてしまう。
いつまで続くのか
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 1か月目 | いちばん比べられます。周りに他の判断材料がありません |
| 2か月目 | 比較は続きますが、頻度が落ちます |
| 3か月目 | あなた自身の物差しができ始めます。ここで大きく減ります |
| 半年 | 前任者の名前がほとんど出なくなります |
目安は3か月です。
この期間を「耐える」でなく「物差しを作る」と考えてください。
1つでも「これはこの人に聞けばいい」と思われる領域ができれば、比較は終わります。
これは別の問題です
・人前で繰り返し比較される
・評価面談で、具体的な基準でなく前任者を持ち出される
・辞めた前任者に、わざわざ連絡して確認される
・3か月を過ぎても頻度が変わらない
・比較を理由に、担当を外される
この場合は記録を残してください(日付・場所・誰が・何を言ったか)。
総合労働相談コーナー(各労働局)で無料相談できます。
とくに3か月を過ぎても変わらない場合は、職場側の問題です。
その場合は、自分を変えて解決しようとしないでください。
前任者が「辞めた人」か「異動した人」かで違います
見落とされがちですが、ここで難易度がかなり変わります。
| 前任者の状況 | 起きること |
|---|---|
| 辞めていて、もういない | 比較は思い出の中の前任者と行われます。記憶は美化されるので、勝ち目のない比較になります |
| 社内で異動しただけ | いちばんやりやすい。本人に直接聞けるので、比較が相談に変わります |
| まだ引き継ぎ期間中 | 気まずいですが、この期間に聞けるだけ聞いてください |
| 体調やトラブルで辞めた | 周りに後ろめたさがあります。比較の裏に別の感情が混ざっています |
1つ目がいちばん厄介です。
いなくなった人の記憶は、時間が経つほど良くなります。
実際の前任者ではなく、美化された前任者と比べられている。
だから、勝とうとしないでください。
その比較には、勝てる形が用意されていません。
同じ土俵で追いつこうとするより、前任者がやっていなかったことを1つ作るほうが早いです。
・手順を資料にした(前任者は頭の中に持っていた)
・進捗を共有するようにした
・誰かの手が止まる場所を1つ直した
「前任者にはなかったもの」が1つできると、比較そのものが成立しなくなります。
よくある質問
Q. 前任者が優秀すぎて、追いつける気がしません
追いつく必要はありません。同じ人になることを求められているわけではないからです。会社が採ったのは前任者の複製ではなく、あなたです。「同じ土俵で勝つ」でなく「別の1つで頼られる」を目指すほうが早く終わります。
Q. 前任者が辞めた理由が気になります
聞いて構いませんが、深追いはしないでください。答えにくい事情があることも多いです。ただし、短期間で何人も辞めているなら、それは別の情報です。比較の問題でなく、職場の問題かもしれません。
Q. 引き継ぎ資料が何もありません
その場合、比較されるのはほぼ避けられません(基準が人の記憶にしかないため)。対処は1つで、自分で資料を作りながら進めることです。関連:中途入社で教えてもらえない
Q. 比べてくる人が、直属の上司です
その場合は、期待値をそろえる話をしてください。「◯か月後にどこまでできていれば良いか、目安を教えてください」。基準が言葉になれば、比較はしにくくなります。
Q. もう辞めたいです
入って間もないなら、3か月は見てから決めてください。この比較は、多くの場合そこで消えます。判断の材料は入社1ヶ月で辞めたいにまとめました。
Q. 比較されるたびに、家に帰ってから落ち込みます
その日のうちに、言われた言葉を書き出してみてください。書くと、「これは相手の都合の話だ」と分かるものがほとんどだと気づきます。頭の中に置いたままだと、全部が自分への評価に見えます。
Q. 前任者が優秀だったと、みんなが言います
辞めた人は、だいたい優秀だったことになります。欠点は忘れられ、良かったところだけが残るからです。いま比べられている相手は、実在の前任者ではありません。そう思っておくだけで、受け止め方が変わります。
Q. 私も前任者と同じで、すぐ辞めたくなります
短期間で人が入れ替わっているなら、それはあなたの問題ではない可能性が高いです。前任者が辞めた理由と、いまあなたが感じていることが同じなら、職場の構造の問題です。ただし、判断は3か月見てからでも遅くありません。
つらいのは、まだ「あなた」を見られていないからです
比べられるのは、能力の問題ではありません。
まだ、あなたを見てもらえていないだけです。
見られていないから、前任者の記憶が代わりに使われている。
だからやることは、前任者に勝つことではありません。
見てもらえる材料を、こちらから出すことです。
比較は、情報がないことの裏返しです
① 次に比較されたら、「前任者の方はどうされていましたか」と聞き返すと決める
② 改善したいことを1つ、メモに書いて寝かせる(出すのは3か月後)
③ 線を越えた扱いを受けているなら、今日の出来事を記録する
前任者と比べられている間は、まだ「その他の人」の位置にいます。
つらいですが、それは時間で動きます。
3か月後、誰かがあなたに何かを聞きに来た日。
その日から、比較は終わります。
だから、いま見るべきなのは前任者ではありません。
3か月後に、何で頼られていたいかのほうです。
入社直後の全体の乗り切り方は中途入社で馴染めないにまとめました。
※本記事は一般的な情報の解説であり、法的助言ではありません。ハラスメントや不利益な扱いを受けた場合は、総合労働相談コーナー(各労働局)などの公的な窓口にご相談ください。※本記事には広告(PR)を含みます。