前の職場が忘れられない…比べているのは、美化された記憶のほうです
前の職場が忘れられないのは、そこが本当に良かったからとは限りません。
人の記憶は、嫌だったことから先に消えます。
いま比べている相手は、実在した前の職場ではなく、美化された前の職場です。
やることは1つ。辞めた理由を、思い出して書き出すことです。
新しい職場で働いている。
環境が悪いわけでもない。
なのに、ふとした瞬間に前の職場を思い出す。
あの人たちは元気だろうか。
なぜ辞めてしまったんだろう。
この記事は、その気持ちの正体から書きます。
記憶は、放っておくと美化されます
これは、あなただけに起きていることではありません。
人の記憶には、偏りがあります。
| 美化される理由 | 中身 |
|---|---|
| 嫌だったことから先に消える | つらい記憶ほど細部が薄れていきます。良かった場面だけが残ります |
| 比べる条件が不公平 | 前の職場は慣れた状態、いまは覚えている最中。同じ土俵ではありません |
| 前の職場では「できる人」だった | 能力の差ではなく、慣れの差です。いまは何をするにも時間がかかります |
| 辞めた理由を忘れている | いちばん大きい。決断した当時の切実さは、半年で薄れます |
| 良かった瞬間だけ切り取られる | 毎日の退屈な時間は思い出しません。楽しかった場面だけが再生されます |
4つ目が、いちばん厄介です。
辞めるという決断は、それなりの理由があってしたはずです。
でも、その理由が思い出せなくなっている。
だから、辞めた自分の判断が間違っていたように見えます。
やることは1つです
辞めた理由を、いま書き出してください。
頭の中で考えるのではなく、紙かメモに書く。
① 辞めようと思ったきっかけの出来事(日付が思い出せればなお良い)
② そのとき、いちばんしんどかったこと
③ 「これ以上は無理だ」と思った瞬間
④ 辞めると決めたとき、何を期待していたか
書いているうちに、思い出してきます。
そして多くの場合、「ああ、そうだった」となります。
思い出は感情つきで再生されますが、
辞めた理由は感情が抜けた事実として残っています。
つまり、楽しかった記憶は鮮明で、つらかった記憶は要約されている。
この非対称が、比較を狂わせます。
書き出すのは、要約されたほうを解凍する作業です。
書けない場合もあります。
そのときは、本当に良い職場だった可能性があります。
それはそれで、大事な情報です(後半に書きます)。
比べる条件を、そろえてください
もう1つ、比較そのものが不公平です。
| 前の職場 | いまの職場 | |
|---|---|---|
| 仕事の習熟 | 何年もやって慣れていた | 覚えている最中 |
| 人間関係 | 何年もかけて作った | まだ作っている途中 |
| 自分の立ち位置 | 頼られる側だった | 教わる側 |
| 記憶の状態 | 良い場面だけ残っている | 嫌なことが生々しい |
これでは、前の職場が勝つに決まっています。
公平に比べるなら、前の職場の「入って3か月のとき」と比べてください。
そのころは、いまと同じくらい不安だったはずです。
それも、忘れているだけです。
思い出すきっかけを、減らしてください
気持ちの持ちようより、環境のほうが効きます。
思い出すのは、思い出す仕掛けが残っているからです。
| きっかけ | どうするか |
|---|---|
| 元同僚のSNS | ミュートで十分。見えなくなるだけで、かなり違います |
| 会社のグループチャット | 退職者は抜けるのが普通です。黙って抜けて構いません |
| 通勤経路が前の会社の近く | 可能ならルートを変えるだけで思い出す回数が減ります |
| 当時の写真・資料 | 捨てなくていいので、すぐ見えない場所へ |
| 前の会社の名前で検索する | これをやっているなら、まず止めてください |
最後の項目は、自覚がない人が多いです。
求人サイトで前の会社を見てしまう。
元同僚の名前を検索してしまう。
そのたびに、記憶が更新されて新鮮になります。
忘れたいなら、触れる回数を減らすのがいちばん確実です。
「前の職場を思い出さないようにしよう」と意識するのは逆効果です。
思い出さないようにするには、一度思い出す必要があるからです。
気持ちで消そうとせず、きっかけを物理的に減らしてください。
それでも忘れられないとき
書き出しても、条件をそろえても、まだ引きずることがあります。
その場合、問題は前の職場ではありません。
・いまの職場に、話せる相手がいない
・いまの職場で、頼られている実感がない
・いまの職場で、まだ1つも自分の仕事がない
前の職場が恋しいのではなく、いま満たされていないものを、前の職場の記憶で埋めている状態です。
だとすれば、やることは前を忘れることではありません。
いまの職場で、1つ手に入れることです。
話せる相手が1人できると、前の職場を思い出す回数が減ります。
関係の作り方は新しい職場で会話に入れないにまとめました。
自分がどのタイプか、確かめてください
「忘れられない」の中身は、3つに分かれます。
どれかで、やることが変わります。
□ 転職して半年以内
□ いまの職場で、まだ手ごたえがない
□ 辞めた理由を書き出したら、思い出せた
□ 前の職場に戻りたいとまでは思わない
比較の条件が不公平なだけです。時間で薄れます。
□ 職場でなく、特定の人を思い出す
□ 仕事の内容は、いまのほうが良い
□ 戻りたいのは環境でなく関係
これは職場を離れても解決できます。
会いたい相手に、個人的に連絡すれば済む話です。
□ 辞めた理由を書き出しても、大したことがなかった
□ いまの職場に、明確に嫌なことがある
□ 1年経っても、思い出す回数が減らない
□ 体調に出ている(眠れない・気分が落ちる)
これは記憶の問題ではなく、いまの環境の問題です。
前を忘れる工夫をしても、解決しません。
③なら、前の職場は関係ありません。
いまの職場をどうするか、という別の話です。
その場合は、前に戻ることだけが選択肢ではありません。
本当に戻りたい場合
全部やったうえで、それでも戻りたいなら。
それは、感傷ではなく判断かもしれません。
ただし、戻る前に確かめることがあります。
・辞めた原因は、いまも残っているか(人・制度・待遇)
・当時の同僚は、まだいるか(顔ぶれが変われば別の職場です)
・戻ったときの立場と条件(前と同じとは限りません)
・周りがどう受け取るか
2つ目が大事です。
恋しいのが職場でなく人なら、
その人たちがいなければ、戻っても同じ場所ではありません。
出戻りの現実は転職して後悔したとき|出戻りはできる?にまとめました。
いつ、薄れてくるのか
目安があります。
| 時期 | だいたいの状態 |
|---|---|
| 辞めて1〜3か月 | いちばん思い出す時期。新しい職場が大変なぶん、比較が起きます |
| 半年 | 新しい職場に慣れ始め、思い出す回数が減ります |
| 1年 | 思い出しても感情が動かなくなります |
| 数年 | 「そんな会社にいたな」程度になります |
つまり、いま1〜3か月なら、ピークにいます。
これから軽くなる、ということです。
そして、薄れるかどうかを決めるのは、前の職場ではありません。
いまの職場で、どれだけ手ごたえが出てくるかのほうです。
・いまの職場で、任される仕事が1つできた
・気軽に話せる相手が1人できた
・仕事以外の予定が入っている
前を忘れる努力より、いまを埋める努力のほうが効きます。
3つ目も意外と効きます。
休みの日に何もしていないと、考える時間が増えます。
よくある質問
Q. 前の職場の人と、まだ連絡を取っています
悪いことではありません。ただ、近況を聞くほど前の職場が近く感じます。引きずっている自覚があるなら、連絡の頻度を少し落としてみてください。距離が離れると、思い出す回数も自然に減ります。
Q. 前の職場の夢をよく見ます
環境が変わった直後はよくあることです。脳が新しい環境を処理している最中に、慣れた場所が出てくると言われます。数か月で減っていきます。ただし、眠りが浅い日が続くなら、こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556や心療内科にご相談ください。
Q. 辞めた理由を書き出したのに、大したことがありませんでした
それは重要な情報です。本当に良い職場だった可能性があります。ただし、「良い職場だった」と「戻るべき」は別です。いまの職場でまだ3か月なら、判断が早すぎます。前の職場も、3か月目は同じように見えていたはずです。
Q. 転職しなければよかったと後悔しています
入って半年以内なら、まだ結論を出さないでください。転職直後はほぼ全員が同じことを思います。慣れる前に判断すると、比較の条件がそろっていないまま決めることになります。
Q. 会社は嫌いだったのに、人だけが恋しいです
その区別ができているなら、判断は正しかったと思います。人との関係は、職場を離れても続けられます。会いたい相手がいるなら、個人的に連絡すれば済む話です。
Q. 前の職場のほうが給料も条件も良かったです
条件は記憶でなく数字で残っています。給与明細を並べて確かめてください。実際に比べると、思っていたほど差がないこともあります。逆に本当に下がっているなら、それは感情でなく事実なので、次の判断材料になります。
Q. 前の職場を辞めたことを、家族に責められます
つらいと思います。ただ、家族も結果しか見ていません。辞めた当時に何があったかは、あなたにしか分かりません。書き出した「辞めた理由」を、一度だけ共有してみるのも手です。
Q. 転職を繰り返しそうで怖いです
前の職場を美化する癖があると、次の職場でも同じことが起きます。だからこそ、いま辞めた理由を書き残しておいてください。次に迷ったとき、その記録が判断を助けます。
記録を残しておくと、次に効きます
最後に1つだけ。
今日書き出した「辞めた理由」は、捨てないでください。
・また同じ気持ちになったとき、読み返せる
・次に転職を考えるとき、判断材料になる
・自分が何を我慢できないかが分かる
記憶は薄れますが、書いたものは薄れません。
これは、今回だけの話ではありません。
人は、辞めるたびに理由を忘れます。
だから、忘れる前に書いておく。
比べている相手は、もう存在しません
① 辞めようと思ったきっかけの出来事を、1つ書き出す
② そのとき何がいちばんしんどかったかを、その下に書く
③ 書けなかったら、いまの職場で足りていないものを1つ書く
前の職場が忘れられないのは、あなたが弱いからではありません。
記憶は、誰にとっても公平ではないからです。
そして、いま思い出しているその職場は、もう存在しません。
人も変わり、仕事も変わり、
何より、あなたの記憶の中で作り変えられています。
だから、そこと比べても答えは出ません。
比べるなら、いまの職場の3か月後の自分です。
退職後の人間関係の整理は辞めた会社の人に会いたくないにも書きました。
いまの職場がどうしても合わないなら転職エージェントおすすめ3選を見ておいてください。
※本記事は一般的な情報の解説であり、法的・医学的助言ではありません。心身の不調が続く場合は医療機関にご相談ください。こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556。※本記事には広告(PR)を含みます。